研究課題概要
●共同研究助成(5件)敬称略・五十音順
代表研究者氏名 |
安部 力 |
所属・役職 |
岐阜大学大学院 医学系研究科 准教授 |
研究課題名 |
食物アレルギーに関わる神経一免疫系の機序解明と軽減手法確立への挑戦 |
研究概要 |
食物アレルギーにおけるアナフィラキシー症状に対し,エピペンで代表されるアドレナリンの投与が第一選択となっている。しかしながら,もともと備わっている副腎からのアドレナリン分泌システムがあるにも関わらず,アナフィラキシー時にこの系が正常に働かない理由はいまだ不明である。本研究では,この機序を明らかにするために,神経-免疫系に関わる自律神経の求心路および遠心路の応答性に着目した研究を進める。
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代表研究者氏名 |
北浦 次郎 |
所属・役職 |
順天堂大学大学院 医学研究科アトピー疾患研究センター 先任准教授 |
研究課題名 |
可溶型ST2に着目した食物アレルギーの病態解明と予防・治療法開発 |
研究概要 |
IL-33受容体として膜型ST2(ST2L)があり、alternative splicing formとして可溶型ST2(sST2)が存在する。本研究では、 IL-33/ST2LシグナルとsST2に着目し、食物アレルギーの病態形成における内因性sST2の役割を明らかにする。さらに、IL-33/ST2Lシグナルを効率よく抑制する分子を開発し、食物アレルギーの予防・治療法の確立を目指す。
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代表研究者氏名 |
野村 伊知郎 |
所属・役職 |
国立成育医療研究センター研究所 好酸球性消化管疾患研究室 室長 |
研究課題名 |
好酸球性消化管疾患、慢性炎症の原因特定のための食物負荷試験標準化に関する研究 |
研究概要 |
好酸球性消化管疾患は厚労省指定難病である。生涯にわたって消化器症状が続き、生活の質は障害される。原因として食物が重要だが、即時型アレルギーと異なり、特定は難しい。我々は、新規食事療法を世界に先駆けて開発中であり、食物負荷試験の実施方法検討のために、①食物負荷症状誘発時の詳細調査。②調味料セット保険収載、③負荷食材試薬開発、④バイオマーカー、⑤消化管組織トランスクリプトーム、を実施する。
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代表研究者氏名 |
藤枝 重治 |
所属・役職 |
福井大学学術研究院 医学研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学 教授 |
研究課題名 |
モデルマウスを用いた花粉-食物アレルギー症候群におけるアレルゲン免疫治療の確立と機序解明 |
研究概要 |
花粉-食物アレルギー症候群 (PFAS) は果物などの原因食物摂取後、数分以内に口唇・口腔の掻痒感、しびれ、粘膜浮腫をきたす疾患である。本研究では、我々が確立したPFASモデルマウスにおける舌下免疫療法を確立し、その作用機序を解明する。方法として各種遺伝子組み換えマウスを使用して、人工的シラカバ抗原(rBet v1)、人工的リンゴ抗原(rMal d1)でアレルゲン免疫療法を行い、制御性T細胞を中心としたメカニズムを解明する。
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代表研究者氏名 |
松本 健治 |
所属・役職 |
国立成育医療研究センター研究所 免疫アレルギー・感染研究部 部長 |
研究課題名 |
経胎盤感作の分子機構の解明 :ヒト胎盤由来絨毛細胞を用いた食物抗原の透過性の検討 |
研究概要 |
私達は、経胎盤感作が強く疑われるFPIES患児6例(臍帯血好酸球増多あり、生後2週間以内の発症)を経験した。本研究では、母胎血中の食物蛋白がどの様にして児に移行するのか、どの様な因子がそれを制御するのかを検討して、母胎-胎児関門の機能を明らかにし、さらに妊娠中の母胎へのストレス(感染、炎症)が与える影響についてin vitroおよびin vivoのモデルを用いて検討する。
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●個人研究助成(15件)敬称略・五十音順
氏名 |
赤川 翔平 |
所属・役職 |
関西医科大学 医学部 小児科学講座 講師 |
研究課題名 |
小児鶏卵アレルギー患者における腸内細菌叢解析を用いた耐性獲得予測 |
研究概要 |
「鶏卵アレルギーの患児において、治療開始時点の腸内細菌叢から鶏卵アレルギー患者の耐性獲得を予測できるか否かを明らかにすること」を目的とする。対象は2019~2021年の期間に鶏卵アレルギーと診断された2~9歳の小児のうち治療開始前に糞便を採取し得た患者60名とし、治療開始から2年以内に耐性獲得した児としなかった児で登録時の腸内細菌叢を比較する。主要評価項目は腸内細菌叢に占める酪酸産生菌割合とする。
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氏名 |
井原 聡三郎 |
所属・役職 |
東京大学医学部附属病院 消化器内科 助教 |
研究課題名 |
樹状細胞のTGF-βシグナルによる食物アレルギーの制御機構 |
研究概要 |
食物抗原に対する免疫寛容の形成において腸管樹状細胞のTGF-βシグナルが果たす役割を検討する。具体的には、樹状細胞特異的 TGF-βII型受容体欠損マウス(CD11c-Cre;tgfbr2 fl/fl)を用いて、食物抗原(OVA)に対する免疫応答、予防接種(経鼻的OVA感作)による一次予防効果、食物抗原と腸内細菌との相互作用、における樹状細胞の TGF-βシグナルの関与を解析する。
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氏名 |
門脇 紗織 |
所属・役職 |
岐阜大学医学部附属病院 小児科 医員 |
研究課題名 |
食物アレルギー診断およびメカニズム解析を目的とした IgE 依存性即時型アレルギーに関する試験管内診断法の確立 |
研究概要 |
好塩基球活性化試験は、患者由来の好塩基球をアレルゲン刺激後に、好塩基球の活性化マーカーをフローサイトメトリーで測定する手法で、即時型食物アレルギーの診断に有用である。本研究では、重症度の評価につなげることを目標として、新たにEC50を求めることで、同一患者内のアレルゲン毎の好塩基球活性化の差を比較可能とするように、改良を試みる。また、培養細胞を用いた好塩基球・肥満細胞の活性化試験の確立を試みる。
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氏名 |
川上 竜司 |
所属・役職 |
京都大学医生物学研究所 特定助教 |
研究課題名 |
食物アレルギーを予防する長期安定型‐制御性 T 細胞の分化・維持メカニズム |
研究概要 |
食物は生体にとって異物ですが、通常はウイルスなど病原体のように免疫系に攻撃・排除されない「免疫寛容」によりからだの中に入ることを許されています。食物が危険な異物と免疫系に誤認識されると食物アレルギーを発症してしまいますが、それを防ぐために免疫細胞たちを教育している重要な細胞のひとつが制御性T細胞 (Treg)です。この研究では、乳幼児がはじめて口にした食物に対する免疫応答を抑制するために制御性T細胞が発生する過程を観察するため、たまご入りのエサに免疫系が反応する特別なマウスモデルを作成します。どのような環境や条件で制御性T細胞が生まれ、またはアレルギーを引き起こす病原的な免疫の活性化が起こるのかを調べることで、食物アレルギーを予防・予測する方法の開発や、食物アレルギーの経口免疫療法の成功率を高めるヒントになることを期待し、研究を進めています。
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氏名 |
高里 良宏 |
所属・役職 |
あいち小児保健医療総合センター 医長 |
研究課題名 |
新生児・乳児消化管アレルギーと腸内菌叢(細菌+真菌)の関連 |
研究概要 |
新生児・乳児消化管アレルギー、その中で摂取後数時間後の嘔吐を主とするFood protein-induced enterocolits syndrome;FPIESは近年患者数が急増している。同疾患に対して即時型食物アレルギー児および健常児を比較対象として腸内菌叢(細菌叢+真菌叢)の特徴を明らかにすることにより、現在までに明らかにされていない発症機序解明および疾患予防介入への発展につなげたい。
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氏名 |
田中 孝之 |
所属・役職 |
京都大学大学院 医学研究科 客員研究員 |
研究課題名 |
鶏卵アレルギー小児の長期的観察による食物アレルギー寛容誘導機序の解明 |
研究概要 |
鶏卵アレルギー患者の日常診療の中で、卵白未摂取から食物負荷試験、自宅での増量を行いながら摂食量が増加する過程で、定期的にIgE検査に加えて好塩基球活性化試験、リンパ球サブセット解析、IgG4測定を行い、耐性獲得の機序を解明する。また食物負荷試験の結果と相関するバイオマーカーの同定を進め、少量卵白摂取負荷試験の際に、症状誘発による患児の負担を避ける方法を見付ける。
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氏名 |
内藤 宙大 |
所属・役職 |
名古屋学芸大学 助手 |
研究課題名 |
リン酸化ペプチドによるカゼインのエピトープ解析 |
研究概要 |
カゼインの分解産物でリン酸化セリン残基を含む配列を基本構造にもつCPPはアレルゲン性を有することが明らかとなっているが、カゼインにおいてその基本構造はエピトープとして報告されていない。それは従来のエピトープ解析には、リン酸化されていない状態のセリン残基が用いられてきたためだと考えた。本研究ではリン酸化された合成ペプチドを用いてカゼインのエピトープ解析を行い、リン酸基の役割を明らかにすることを目指す。
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氏名 |
長竹 貴広 |
所属・役職 |
明治大学 専任准教授 |
研究課題名 |
オメガ3脂肪酸代謝物 17,18-エポキシエイコサテトラエン酸による食物アレルギー抑制機構の解明 |
研究概要 |
私たち哺乳類にとってオメガ脂肪酸は、食事により摂取する必要がある必須脂肪酸である。これまでに、オメガ3脂肪酸の腸管代謝物である17,18-エポキシエイコサテトラエン酸は高活性代謝物として働き、食物アレルギーの発症を抑制することをマウス個体レベルで示したが、その作用機構は不明である。そこで本研究では、in vitro細胞培養系を用い、本代謝物の標的細胞や作用機構を解明することを目的とする。
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氏名 |
野村 孝泰 |
所属・役職 |
名古屋市立大学大学院 医学研究科 新生児・小児医学 講師 |
研究課題名 |
胃食道逆流に注目した牛乳アレルギーモデルマウスの免疫機序の解明 |
研究概要 |
乳児期の食物アレルギーは、初めての経口摂取で発症することも少なくなく、経皮あるいは経気道などの感作経路について解析が行われている。今回我々は、牛乳成分を含む胃食道逆流が、気道の自然免疫細胞の活性化を介して、感作を促進すると仮説を立て、これまでの実験でマウスモデルを確立した。今年度は、作用機序解明の最終段階として抗原投与早期のsingle cell RNA-seq解析で詳細な作用機序を探求する。
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氏名 |
牧田 英士 |
所属・役職 |
自治医科大学附属さいたま医療センター 小児科 講師 |
研究課題名 |
鶏固形食物による消化管アレルギーの診断と予後予測におけるバイオマーカーの研究 |
研究概要 |
近年、本邦において固形食物による消化管アレルギー food protein-induced enterocolitis syndrome (FPIES)が急増しているが、診断に有用なバイオマーカーは確立されていない。また、FPIESの診断後には一定期間の抗原除去後に寛解確認のための食物経口負荷試験を行う必要があるが、寛解時期を予測する因子も不明である。本研究では、FPIESの診断予測や予後予測に有用な各種バイオマーカーについて検討する。
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氏名 |
松岡 諒 |
所属・役職 |
国立成育医療研究センター研究所 免疫アレルギー・感染研究 共同研究員 |
研究課題名 |
新生児・乳児早期に発症する消化管アレルギーの病態解明 |
研究概要 |
消化管アレルギーは食物成分に対する免疫応答によって消化器症状などを呈する疾患であるが、新生児期に、母乳・ミルクを摂取する前から発症する症例が存在する。それらの患者では、臍帯血中の好酸球が有意に増加していることから、母体・胎内での環境が関与している可能性が示唆される。そこで本研究では、母体が摂取する食物成分に着目し、新生児・乳児期早期に発症する消化管アレルギーのメカニズムを解明することを目的とする。
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氏名 |
松田 将也 |
所属・役職 |
摂南大学 薬学部 特任助教 |
研究課題名 |
デザイナー細胞外小胞を用いた食物アレルギーの予防・治療法の創出 |
研究概要 |
経口免疫療法は、食物アレルギーに対する治療法として期待されているが、十分な効果が得られない患者が少なからず存在する。Type 1 regulatory T (Tr1) 細胞の誘導は、食物抗原に対する耐性獲得を目指す上で重要な免疫学的変化であり、それを誘導できれば効率的な予防が期待できる。本研究では、Tr1細胞の効率的な誘導を可能にする細胞外小胞を作製するとともに、その予防効果を明らかにする。
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氏名 |
山本 健 |
所属・役職 |
千葉大学医学部附属病院 小児科 助教 |
研究課題名 |
小児牛乳アレルギー患者における重症化メカニズム解明とビタミンD併用による新規経口免疫療法の開発 |
研究概要 |
本研究は、小児の重症牛乳アレルギー(CMA)診断のためのバイオマーカー開発と重症CMAの新規治療法開発を目的としている。CMA患者の重症化に関与する細胞群やタンパク質の特徴を新たな手法を用いて明らかにすることが目的である。さらに先行研究から血中ビタミンD濃度と食物アレルギー発症に注目し、積極的なビタミンD摂取を併用した牛乳少量摂取が早期の耐性獲得を誘導可能か検証するために介入研究を行う。本研究は、小児の重症牛乳アレルギー(CMA)診断のためのバイオマーカー開発と重症CMAの新規治療法開発を目的としている。CMA患者の重症化に関与する細胞群やタンパク質の特徴を新たな手法を用いて明らかにすることが目的である。さらに先行研究から血中ビタミンD濃度と食物アレルギー発症に注目し、積極的なビタミンD摂取を併用した牛乳少量摂取が早期の耐性獲得を誘導可能か検証するために介入研究を行う。
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氏名 |
横大路 智治 |
所属・役職 |
広島大学大学院 医系科学研究科(薬) 准教授 |
研究課題名 |
ω5-グリアジン欠失 1BS-18 小麦系統の生体内での低アレルゲン性の検証 |
研究概要 |
動物モデルを用いた先行研究により、小麦抗原であるω5-グリアジンを欠失した1BS-18小麦系統が、小麦抗原に対する経口免疫寛容を誘導し、小麦アレルギーの発症予防や治療に応用できる可能性を見出した。本研究では,1BS-18小麦系統を用いた安全で効果的な予防・治療法を開発するため、1BS-18小麦系統のラット及びヒト生体内における低アレルゲン性を血清中ω5-グリアジン濃度上昇の観点から検証する。
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氏名 |
吉川 倫太郎 |
所属・役職 |
島根大学 医学部 助教 |
研究課題名 |
間葉系幹細胞による食物アレルギー予防効果の検討 |
研究概要 |
骨・軟骨・脂肪への分化能を有する体性幹細胞である間葉系幹細胞は、それ自身が直接免疫担当細胞を制御することに加えて制御性T細胞を誘導することによって免疫抑制作用を発揮することが報告されている。したがって、本研究では制御性T細胞が中心的な役割を担っている経口免疫療法の安全性と治療効果が間葉系幹細胞によって向上する可能性について検討することにより、食物アレルギーの根本的治癒の確立を目指す。
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