「2021年度公募型研究助成事業」
研究課題概要

研究課題概要

●共同研究助成(5件)50音順・敬称略

代表研究者氏名 安達 貴弘
所属・役職 東京医科歯科大学難治疾患研究所 未病制御学 准教授
研究課題名 食物アレルギーにおける免疫記憶の解明およびその制御法の開発
研究概要 食物に感作されて食物アレルギーを発症するが、その時には食物に対する免疫記憶が成立すると考えられるが、その実体はよくわかっていない。そこで本研究では、食物アレルギーの原因となるIgE抗体産生に関わる免疫記憶の成立およびその維持の機序、さらには他の疾病との関連を明らかにし、それをもとにした抗原特異的な免疫寛容の制御法の確立を目的とした研究を行う。
代表研究者氏名 大矢 幸弘
所属・役職 国立成育医療研究センター アレルギーセンター センター長
研究課題名 鶏卵アレルギー児に対する経口免疫寛容を誘導するための安全性の高い摂取法の開発‐ランダム化比較試験
研究概要 本研究では、鶏卵アレルギー患者が経口免疫寛容のメカニズムに基づき耐性を獲得するため安全に摂取を開始し継続する方法を確立する目的で、食物経口負荷試験で症状誘発閾値を確認後、閾値に対し微量の食物の摂取を開始し少量で維持する方法(微量開始法)が、対照治療法(標準的最小除去療法)よりも、安全性に優れることを単施設第Ⅱ相二重盲検ランダム化並行群間比較試験(安全性の検討試験・有効性の探索試験)にて検討する。
代表研究者氏名 松尾 裕彰
所属・役職 国立大学法人 広島大学 病院薬剤部 教授
研究課題名 Amplified Luminescence Proximity Homogeneous Assay (ALPHA)法を用いた食物アレルギーの新規検査法の開発
研究概要 食物アレルギーの検査には、患者血清中のアレルゲン特異IgE検査、健常者末梢血好塩基球を利用したヒスタミン遊離試験、患者好塩基球を利用した好塩基球活性化試験などがある。これらの検査には、偽陽性が認められること、侵襲性があること、好塩基球のドナーの違いが検査結果に影響すること等の問題がある。本研究では、Amplified Luminescence Proximity Homogeneous Assay (ALPHA) 法を利用して、低侵襲かつ精度の高い新規アレルゲン特異IgE検査法の開発を試みる。
代表研究者氏名 松本 健治
所属・役職 国立成育医療研究センター研究所 免疫アレルギー・感染症研究部 部長
研究課題名 食物に対する経消化管感作の機序、特にIL-25の役割の解明
研究概要 IgE依存性食物アレルギー患者の一部や、IgE非依存性食物アレルギー(消化管アレルギー)患者の感作経路は経腸管感作が疑われているが、一般に経口摂取した食物抗原に対する免疫応答は寛容誘導であり、経腸管感作の機序については全く不明である。本研究では、食物抗原に対する経腸管感作におけるIL-25の役割を、in vitroおよびin vivoのモデルで検証する。
代表研究者氏名 丸山 伸之
所属・役職 京都大学大学院農学研究科 教授
研究課題名 「花粉症関連食物アレルギー症候群」における原因高原のエピトープ構造解析と低アレルゲン化食品の開発基盤
研究概要 「花粉関連食物アレルギー症候群」の患者数が増加している。本研究では、「花粉関連食物アレルギー症候群」における交差反応の原因となるアレルゲンを明らかにし、そのエピトープを解析することにより、食物アレルギーにおける花粉との交差反応に関わる原因抗原の全体像の解明に貢献することを目的とする。また、そのエピトープ構造を破壊する条件を見出すことにより、低アレルゲン化食品の開発にも寄与する。

●個人研究助成(18件)50音順・敬称略

氏名 赤川 翔平
所属・役職 関西医科大学医学部 小児科学講座 助教
研究課題名 小児の食物アレルギーと腸内細菌叢の関連
研究概要 「酪酸産生菌の減少に特徴づけられるdysbiosisが、制御性T細胞の減少を招き、アレルギー疾患発症に関与する」という仮説を検証することを目的とする。 食物アレルギーを有する小児から便を採取し、16S rRNA遺伝子解析により詳細な腸内細菌叢プロファイルを明らかとし、同年代の健常小児と比較する。本研究成果は、酪酸産生菌や酪酸を投与するという新たなアレルギー疾患の予防法や治療法の開発につながる可能性がある。
氏名 伊沢 久未
所属・役職 順天堂大学大学院医学研究科 アトピー疾患研究センター 助教
研究課題名 脂質を認識するペア型免疫受容体による食物アレルギーの病態制御機序の解明と予防・治療法開発
研究概要 脂質を認識するペア型免疫受容体CD300bとCD300fによる食物アレルギーの病態形成機序の全貌を明らかにすることを目標とする。具体的には、CD300f欠損マウス、CD300b欠損マウス、細胞(樹状細胞、マスト細胞など)特異的CD300f欠損マウスを用いて食物アレルギーモデルを誘導する。また、CD300fを標的とする脂質vesicleによる食物アレルギーの予防・治療法開発を試みる。
氏名 市 育代
所属・役職 お茶の水女子大学基幹研究院 講師
研究課題名 高度不飽和脂肪酸欠乏による食物アレルギー応答の制御変化と機序の解明
研究概要 高度不飽和脂肪酸(炭素数20以上、二重結合3つ以上の脂肪酸)は免疫応答に重要な脂質である。本研究では、脂肪酸不飽和化酵素FADS2の欠損マウスを用いて高度不飽和脂肪酸欠乏モデルを作成し、食物アレルギーの病態悪化に及ぼす影響を検討する。本研究より、これまで重要視されていなかった脂質栄養に関して、欠乏という観点からアレルギーの病態に及ぼす影響を検討し、制御機構を明らかにする。
氏名 鵜川 真実
所属・役職 摂南大学 特任助教
研究課題名 膜透過ペプチドを側鎖に持つ高分子のアレルギー根治療法への展開
研究概要 食物アレルギーの経口免疫療法において、十分な効果が得られない患者が少なからず存在している。我々はこれまで、膜透過ペプチドを側鎖にもつ高分子を開発し、マウスにワクチン抗原と本高分子の混合物を投与することにより、抗原特異的な抗体産生を引き起こすことに成功している。本研究では、本高分子を用いて無害な免疫反応を誘導することによりアレルギーを抑制するという戦略により、効果的なアレルギー治療法の確立を目指す。
氏名 川本 典生
所属・役職 岐阜大学医学部附属病院 小児科 講師
研究課題名 食物アレルギー診断技術向上と抗原改変食品作成を目標としたIgEの構造エピトープ・線形エピトープの解析
研究概要 食物アレルギーを対象にIgE抗体の立体エピトープ(conformational epitope)と線形エピトープ(sequential epitope)を区別して反応させるなどの方法で、その構成比を推定できるような測定系を開発する。これにより食物アレルギーのメカニズムの一端が解明されると期待しており、また、今後の「食べて治す」抗原改変食品開発の基礎技術にする事を目標としている。
氏名 清水 裕
所属・役職 北海道大学大学院水産科学研究院 技術専門職員
研究課題名 甲殻類アレルゲンの消化性と消化管吸収動態に及ぼすメイラード反応の影響
研究概要 先行研究において、マウスへの経口投与試験によって、グルコースとのメイラード反応がカニの主要アレルゲン(トロポミオシン;TM)の消化・吸収性を、低下させる傾向があること見出した。続く本研究では、メイラード反応進行度の異なるTM群を調製してマウスへ投与することで、反応進行度と吸収抑制効果の関連について調べる。さらにTMの透過経路を、マウスの消化管上皮細胞の免疫染色などで調査する。
氏名 高里 良宏
所属・役職 あいち小児保健医療総合センター 医長
研究課題名 固形物による食物誘発性胃腸症(FPIES)の機序解明
研究概要 系統的な知見に乏しい固形物を原因とする食物蛋白誘発胃腸炎に対して統一抗原を用いたⅣ型、Ⅰ型アレルギー検査を網羅的に行うことにより、病態解明および有用な補助診断法の確立を目指すことを目的とする。対象は明らかな病歴で上記病名と診断される患者または本症を疑い、経口負荷試験を受ける患者(負荷試験結果によらない)とする。外来及び入院にて採血及び皮膚テストを行い、補助診断としての各種検査項目の評価を行う。
氏名 田中 孝之
所属・役職 京都大学大学院医学研究科 客員研究員
研究課題名 鶏卵アレルギー小児の長期的観察による食物アレルギー寛容誘導機序の解明
研究概要 鶏卵アレルギー患者の日常診療の中で、卵白未摂取から食物負荷試験、自宅での増量を行いながら摂食量が増加する過程で、定期的にIgE検査に加えて好塩基球活性化試験、リンパ球サブセット解析、IgG4測定を行い、耐性獲得の機序を解明する。また食物負荷試験の結果と相関するバイオマーカーの同定を進め、患児への負荷試験の負担なしに、摂食可否を判断できるマーカーを見付ける。
氏名 田中 志典
所属・役職 東北大学 助教
研究課題名 食物アレルギーに対する舌下免疫療法の効果増強法の開発
研究概要 舌下免疫療法は抗原を舌下粘膜から吸収させ、体質の改善を図る簡易かつ有効なアレルギー治療法であり、アレルギー性鼻炎に対する一般的な治療法として普及している。しかし、食物アレルギーに対する治療効果は限定的で、最終的な耐性獲得は困難である。本研究では口腔粘膜の樹状細胞を標的とし、腸管指向性の制御性T細胞を効率的に誘導し、舌下免疫療法の食物アレルギーに対する治療効果を増強する方法の開発を目指す。
氏名 中野 泰至
所属・役職 千葉大学医学部附属病院 小児科 助教
研究課題名 乳児期のビタミンD投与によるアレルギー予防に関する研究開発
研究概要 国内外の疫学調査から母体・小児のビタミンD(VD)欠乏の頻度が多く、VD低値が食物アレルゲン感作及び食物アレルギー発症に深く関与する可能性が示されている。そこで本研究では出生早期から乳児にVDを経口的に摂取してもらい、VDが感作・アレルギーを予防できるかを検証することを目的として、VDシロップ及びプラセボを用いた無作為ランダム化比較試験を2019年度から行っており、今年度も引き続き継続している。
氏名 西 甲介
所属・役職 国立大学法人愛媛大学 准教授
研究課題名 魚油由来脂肪酸による食物アレルギー予防効果の実証と、そのメカニズムの解明
研究概要 申請者の先行研究において、青魚に豊富に含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)が免疫細胞の一種であるリンパ球に作用して、アレルギー疾患の発症に対して予防的に機能する可能性が示唆されています。本研究では、継続的なDHAの摂取が食物アレルギーの一次予防に有効であるかを検証します。また、食物アレルギーの発症に対するDHAの予防メカニズムの分子レベルでの解明を目指します。
氏名 野村 孝泰
所属・役職 名古屋市立大学大学院医学研究科 新生児・小児医学 助教
研究課題名 胃食堂逆流に注目した牛乳アレルギーモデルマウスの免疫機序の解明
研究概要 乳児期の食物アレルギーは、初めての経口摂取で発症することも少なくなく、経皮あるいは経気道などの感作経路について解析が行われている。今回我々は、牛乳成分を含む胃食道逆流が、気道の自然免疫細胞の活性化を介して、吸入抗原への感作を促進すると仮説を立てた。昨年度の研究で胃食道逆流による牛乳アレルギーモデルマウスを確立した。今年度は詳細な免疫機序の解明に加え、ビタミンD欠乏が本モデルに与える影響を検討する。
氏名 藤田 真弓
所属・役職 神奈川県立こども医療センター アレルギー科 シニアレジデント
研究課題名 ピーナッツ経口免疫療法の維持期における最適な維持方法の探索
研究概要 ピーナッツアレルギーの治療として、ピーナッツ経口免疫療法を行っているが、維持治療の継続が困難であることが問題である。当施設において、ピーナッツの維持量や摂取頻度を減らし継続率を上げる試みを行っており、ピーナッツ抗原とピーナッツのコンポーネントの特異的IgE値やIgG4値、末梢血好塩基球活性化などの免疫学的パラメータを評価し、ピーナッツ経口免疫療法の維持期における最適な維持量や摂取頻度を見出す。
氏名 森田 英明
所属・役職 国立成育医療研究センター研究所 免疫アレルギー・感染研究部 室長
研究課題名 重症消化管アレルギーの病態解明
研究概要 近年、新生児・乳児消化管アレルギー(以下、消化管アレルギー)の症例報告が急激に増加しているが、その病態の詳細はほとんど明らかになっていない。本研究では、自施設で確立した同疾患の動物モデル用いて、その発症メカニズムを明らかにし、新規治療法の開発につなげることを目的とする。
氏名 山下 弘高
所属・役職 琉球大学医学研究科 薬理学講座 准教授
研究課題名 食物アレルギーにおける経皮感作と経口免疫寛容のバランスの解明
研究概要 食物アレルギーは、未成熟な腸管で食物抗原に感作され、アレルギーを発症すると考えられてきた。近年は、抗原が皮膚に触れることが主要な感作経路であり、腸管経路は、むしろ、免疫寛容を誘導すると考えられている。昨年度に得られたデータから、経口免疫寛容の獲得には、プロテアーゼや脂質関連因子の関与が示唆されていた。本年度は、そのデータの詳細を解析し、経皮感作と経口免疫寛容の関係を明らかにしたい。
氏名 横田 雅也
所属・役職 千葉大学医学部付属病院 総合医療教育研修センター 特任助教
研究課題名 食物抗原に対する経口免疫寛容の誘導における腸管常在好酸球の役割の解明
研究概要 食物アレルギーの発症には経口免疫寛容の破綻が関わると考えられているが、詳細なメカニズムは未だ不明である。近年、生体内の好酸球の多くは腸管粘膜固有層に常在し、腸管の恒常性維持に重要な役割を果たしていることが明らかとなってきた。しかし、経口免疫寛容の誘導・維持における腸管常在好酸球の役割は未だ不明である。本研究では、経口免疫寛容誘導における腸管常在好酸球の役割を、好酸球欠損マウスを用いて明らかにする。

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