「2022年度公募型研究助成事業」
研究課題概要

研究課題概要

●共同研究助成(6件)50音順・敬称略

代表研究者氏名 井上 祐三朗
所属・役職 千葉大学大学院 医学研究院総合医科学 特任講師
研究課題名 唾液の次世代プロテオーム解析による、非侵襲的な食物蛋白誘発胃腸炎の診断・症状誘発予測マーカーの開発
研究概要 食物蛋白誘発胃腸炎(FPIES)は、食物アレルゲン摂取後に嘔吐などの消化器症状を来たす非IgE依存性食物アレルギーの一つである。 本研究では、唾液の次世代プロテオーム解析により、非侵襲的なFPIESの診断・症状誘発予測マーカーを確立することを目的とする。さらに、発現変動タンパク質の、機能解析・パスウェイ解析により、FPIESの新たな病態関連タンパク・治療ターゲットタンパクの発見を目指す。
代表研究者氏名 今井 孝成
所属・役職 昭和大学 医学部小児科学講座 教授
研究課題名 食物アレルギー児におけるレジリエンス尺度の開発
研究概要 食物アレルギー児のメンタルヘルスは、抑うつや自殺企図などの問題が指摘される。一方でレジリ エンスとは“困難な状況であるにもかかわらずうまく適応する過程・能力・結果”と定義される。 食物アレルギー児がレジリエンスを高めることは、メンタルヘルスを健康にし、移行支援の要となりうる。しかしながら、いまだ食物アレルギー児のレジリエンス尺度は確立されていない。このため本研究では、その尺度の確立を目指す。
代表研究者氏名 神沼 修
所属・役職 広島大学原爆放射線医科学研究所 疾患モデル解析研究分野 教授
研究課題名 食品の味覚成分を利用した食物アレルギー制御法
研究概要 本研究は、花粉症に対する舌下免疫療法の有効性に、T細胞上の味覚受容体が関わる可能性を示した独自の先行研究成果に基づいて実施します。T細胞に発現する各種味覚受容体の全容を解明すると共に、その機能的役割を細胞レベル、動物モデルおよび臨床検体の解析を通じて詳細に検証します。それにより、特定の味覚受容体を介したT細胞機能制御法が、食物アレルギーの新たな予防・治療戦略となりうるかを明らかにします。
代表研究者氏名 佐藤 さくら
所属・役職 国立病院機構相模原病院 臨床研究センター 食物アレルギー研究室長
研究課題名 アレルゲンコンポーネントを活用した乳児期の食物アレルゲン感作に関する研究
研究概要 アレルゲンコンポーネントを活用した潜在クラス分析により多様な乳幼児の食物アレルギーの臨床像を明らかにすることを目的に、後ろ向きおよび前向きコホート研究を実施する。アレルゲン感作のある児の臨床情報及び6ヶ月、12ヶ月、18ヶ月時の粗抗原およびアレルゲンコンポーネント特異的IgE抗体価を測定し、潜在クラス分析によりクラス分類を行うことで、乳幼児期の食物アレルギーの多様な臨床像を重症度や予後に基づき層別化する。
代表研究者氏名 鈴木 亮
所属・役職 金沢大学 医薬保健研究域 薬学系 教授
研究課題名 新規アレルギー抑制分子 Ly6G によるマスト細胞の機能制御と創薬への応用
研究概要 アレルギー疾患の患者数は、世界的にも増加の一途をたどっている。そのため、アレルギー反応の制御分子の発見や機能解明は重要な研究課題である。我々は、独自のシステムを用いた研究から、好中球に発現するLy6Gタンパク質が、マスト細胞の脱顆粒反応を制御する効果があることを明らかにした。本研究では、好中球タンパク質Ly6Gによるアレルギー応答の制御機構に関する分子基盤の解明を目指す。
代表研究者氏名 藤枝 重治
所属・役職 福井大学学術研究院 医学研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 教授
研究課題名 モデルマウスを用いた花粉-食物アレルギー症候群における経口免疫治療の確立と機序解明
研究概要 ブタクサ花粉を用いた花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)マウスモデルにて、舌下免疫療法(SLIT)を用いたアレルゲン免疫療法(PFAS-SLITモデル)を確立する。舌下投与に用いる試薬は、リンゴエキス、Mal d 1、シラカンバエキス、Bet v 1とする。最も効果のあったSLITにおいて、制御性T細胞の発現を調べるとともに、Foxp3欠損マウス、IL-10欠損マウスで検討し、そのメカニズムを解明する。

●個人研究助成(15件)50音順・敬称略

氏名 赤川 翔平
所属・役職 関西医科大学 医学部小児科学講座 講師
研究課題名 機能性大麦を用いた腸内細菌叢を標的とする新たな食物アレルギー治療法の開発
研究概要 「食物繊維を豊富に含む機能性大麦の摂取が、食物アレルギー患者の酪酸産生菌減少に特徴づけられる腸内細菌叢の乱れを是正し、食物アレルギーの新たな治療法になり得る」という仮説を検証することを目的とする。食物アレルギー患者50名を対象とし、機能性大麦を含むクッキーを用いたプラセボ対照二重盲検ランダム化試験を実施し、摂取前後の腸内細菌叢を2群で比較する。主要評価項目は腸内細菌叢に占める酪酸産生菌割合とする。
氏名 安藤 智暁
所属・役職 順天堂大学大学院 医学研究科アトピー疾患研究センター 助教
研究課題名 経皮感作による食物アレルギー発症の新規病態機序の解明
研究概要 取り組む課題は、黄色ブドウ球菌毒素に着目して、経皮感作による食物アレルギーの病態を解明することである。研究目的は、経皮感作による食物アレルギーのマウスモデルを構築して、皮膚における各種の黄色ブドウ球菌毒素の存在が感作及びその後の食物アレルギー発症にどのような影響を及ぼすかを明らかにすることである。最終的な目標は、病態機序に基づき、食物アレルギーに対する画期的な予防・治療法を開発することである。
氏名 伊藤 尚弘
所属・役職 福井大学医学部付属病院 総合周産期母子総合医療センター 特命助教
研究課題名 食物アレルギーのアウトグローにおける抗原特異的IgDの役割
研究概要 食物アレルギーは年齢とともに原因食物の摂取が可能となる耐性獲得(アウトグロー)が期待されるが、どのような場合に耐性獲得するか明らかとなっていない。本研究では、マウスでの研究で食物アレルギーの耐性獲得に至る経過での抗原特異的IgDの推移やその病態への寄与について明らかにし、さらにヒトにおいても同様症例をコホート研究での検討を行うことで、耐性獲得における抗原特異的IgDの役割の解明を目的とする。
氏名 井上 雅己
所属・役職 神戸学院大学 薬学部 助教
研究課題名 経口免疫寛容を強力に誘導する新規 Treg 標的バイオロジクスの創製
研究概要 制御性T細胞(Treg)は、末梢免疫寛容を担うリンパ球として腸管粘膜固有層に多く存在する。近年、食物アレルギー患者ではTregの機能不全が認められ、アレルギー発症との関連が注目されている。我々はこれまで、2型TNF受容体(TNFR2)シグナルが新たなTreg制御分子であることを見出してきた。本研究では、TNFR2を標的としてTregを強力に活性化可能な新規モダリティ分子を創製し、食物アレルギー治療への応用について可能性を探る。
氏名 小谷 仁司
所属・役職 島根大学 医学部医学科 免疫学講座 講師
研究課題名 食物アレルギー予防・治療を目指した核内受容体リガンドによる制御性T細胞分化制御解析
研究概要 本研究は、健康で幸せな食生活を営み、多くの人々が食を楽しむことを実現することを目的として、腸管における免疫寛容を担う制御性T細胞の分化制御機能を持つ核内受容体(RARやNR4A2)とヘテロダイマーを形成する核内受容体RXRのリガンドについて、食物アレルギーに関する各種機能およびヘテロダイマー選択性を解析し、より副作用の少ない食物アレルギー治療薬の開発を目指す。
氏名 佐藤 陽
所属・役職 医療創生大学 薬学部 衛生薬学部門 准教授
研究課題名 D-アミノ酸含有ビオチニル化ペプチドによる持続的な抗アナフィラキシー効果の検証
研究概要 血小板活性化因子(PAF)は、アナフィラキシーの発症に関わる生理活性脂質として知られており、その活性を阻害することで致死的なアナフィラキシーを改善できる。最近私達は、生体内安定性に優れ、PAFとの特異的結合能を有しその活性を抑制するD-アミノ酸含有ビオチニル化ペプチドを見出した。本研究では、このペプチドのアナフィラキシー治療薬としての開発・実用化を目指して、疾患モデル動物を用いてペプチドの有効性を検証する。
氏名 清水 裕
所属・役職 北海道大学大学院 水産科学研究院 技術専門職員
研究課題名 発酵を利用した低アレルゲン化エビ調味料開発の試み
研究概要 本研究は、発酵に伴う低アレルゲン化現象の全体像の解明と、高度に低アレルゲン化した発酵水産食品の開発を目的としている。エビを原料とするインドネシアの伝統的な発酵調味料TERASIをモデル食品とし、その製造工程における発酵条件の変化(発酵期間、水分活性、内因性プロテアーゼ、スターター添加など)が、トロポミオシン(TM)のアレルゲン性に及ぼす影響を、TM構造やIgE結合能変化などを指標にして検討する。
氏名 中野 泰至
所属・役職 千葉大学医学部附属病院 小児科 助教
研究課題名 母乳中 micro RNA が食物アレルギー発症に及ぼす影響
研究概要 母乳中にはmicroRNA(miRNA)が豊富に存在しており、免疫に関わるmiRNAも豊富に存在していることが分かっている。しかし、母乳中miRNAが乳児期の食物アレルギー発症に関わっているかは未だ明らかにされていない。そこで本研究では母乳中miRNAが食物アレルギーにどのように関わっているかを検討することを目的とし、我々の出生コホート研究の母乳サンプルを用いてmiRNAの解析を行う。
氏名 中村 公亮
所属・役職 国立医薬品食品衛生研究所 食品部第五室 室長
研究課題名 加工食品の輸出拡大を目指したコーデックス指定アレルゲンならびにアレルゲン様化学物質の網羅的検出法の基盤的検討
研究概要 食品を輸出する際のアレルギー対応食品には、輸出先のニーズに合致した科学的エビデンスに基づいたものにする必要がある。本研究では、輸出先国から求められるアレルギー対応食品に有用な、各種アレルゲンを一斉に検出する方法の開発を目指す。また、「アレルギー様」症状を引き起こすとされる低分子化学物質にも適応可能な方法の確立に関する基盤的研究を行う。
氏名 野村 孝泰
所属・役職 名古屋市立大学大学院 医学研究科 新生児・小児医学 助教
研究課題名 胃食道逆流に注目した牛乳アレルギーモデルマウスの免疫機序の解明
研究概要 乳児期の食物アレルギーは、初めての経口摂取で発症することも少なくなく、経皮あるいは経気道などの感作経路について解析が行われている。今回我々は、牛乳成分を含む胃食道逆流が、気道の自然免疫細胞の活性化を介して、感作を促進すると仮説を立てた。昨年度までの研究で胃食道逆流による牛乳アレルギーモデルマウスを確立した。今年度はトランスクリプトーム解析などの網羅的アプローチで、本モデルの免疫機序を明らかにする。
氏名 田中 孝之
所属・役職 京都大学大学院 医学研究科 客員研究員
研究課題名 鶏卵アレルギー小児の長期的観察による食物アレルギー寛容誘導機序の解明
研究概要 鶏卵アレルギー患者の日常診療の中で、卵白未摂取から食物負荷試験、自宅での増量を行いながら摂食量が増加する過程で、定期的にIgE検査に加えて好塩基球活性化試験、リンパ球サブセット解析、IgG4測定を行い、耐性獲得の機序を解明する。また食物負荷試験の結果と相関するバイオマーカーの同定を進め、患児への負荷試験の負担なしに、摂食可否を判断できるマーカーを見付ける。
氏名 深谷 知宏
所属・役職 宮崎大学 医学部医学科感染症学講座免疫学分野 助教
研究課題名 経口免疫寛容における粘膜組織樹状細胞と腸内細菌叢との相互作用の役割の解明
研究概要 近年、アレルギー疾患発症の低年齢化が報告されており、幼若期の抗生剤曝露がアレルギー疾患発症リスクの増加に関与する事が指摘されている。一方、その作用機序については依然不明な点が多く残されている。本研究では、幼若期の抗生剤曝露により食物アレルギーを導く免疫撹乱について、免疫応答の司令塔として作用する樹状細胞に着眼し、消化管粘膜免疫寛容の破綻機構の解明とその制御方法の開発を目指す。
氏名 牧田 英士
所属・役職 自治医科大学附属さいたま医療センター 小児科 講師
研究課題名 固形食物による消化管アレルギーの予後予測因子についての研究
研究概要 近年、鶏卵などの固形食物による消化管アレルギー food protein induced enterocolitis syndrome (FPIES)の報告が増加している。FPIESの寛解確認のためには病院で原因食物を摂取する食物経口負荷試験が必須であるが、寛解時期の推定は困難なため食物経口負荷試験を行う適切な時期は確立されていない。本研究では、FPIES症例の急性期症状や検査値(各種バイオマーカー)と寛解時期について評価し、寛解時期の推定に有用な因子について検討する。
氏名 三浦 陽子
所属・役職 独立行政法人 国立病院機構 相模原病院 小児科 レジデント
研究課題名 LGG乳酸菌を併用して行う経口免疫療法の有効性を検証する研究
研究概要 少量の負荷試験で客観的なアレルギー症状が誘発される5歳以上の重症な即時型食物アレルギー児に対して、乳酸菌(Lactobacillus rhamnosus GG)を併用した少量を目標量とした経口免疫療法(OIT)を実施する。12ヶ月後の中等量の負荷試験の耐性獲得の有無、腸内細菌叢と血中短鎖脂肪酸の経時的変化を評価する。OITの効果の向上と、効果を促進するメカニズムを解明することが期待される。
氏名 横大路 智治
所属・役職 広島大学大学院 医系科学研究科(薬) 准教授
研究課題名 低アレルゲン化小麦の交差反応を利用した安全性の高い小麦アレルギーの予防法と治療法の開発
研究概要 小麦アレルギーの根治を目的に減感作療法が行われている。しかし、治療に用いる小麦には患者のIgE抗体と反応する抗原が含まれているため、患者はアナフィラキシーを起こす危険性が高い。本研究では、小麦アレルギーの主要抗原であるω5-グリアジン遺伝子を欠失した1BS-18小麦を利用し、グリアジンコンポーネント間の交差反応によりω5-グリアジンに対する感作予防と根治療法が可能であるかを動物モデルで検証する。

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