「2024年度公募型研究助成事業」
研究課題概要

研究課題概要

●共同研究助成(6件)敬称略・五十音順

代表研究者氏名 楠 隆
所属・役職 龍谷大学 農学部 食品栄養学科 小児保健栄養学研究室 教授
研究課題名 野菜摂取と学童期の食物アレルギー:腸内細菌を含む網羅的コホート研究
研究概要 学童期の野菜摂取が食物アレルギー(FA)の改善や予防に対してどれほど有効であるのか、3年間に渡るコホート研究で明らかにする。光学的皮膚カロテノイド量(ベジスコア)測定や、腸内細菌叢、血中代謝物の解析を行ない、FAの経過や新たに発症するFAとの関連を検討する。これらの指標を通じて、学童期における食生活がFAの進展にいかなる影響を与えるのかを客観的にとらえ、学童の食への介入、食育指導へつなげる。
代表研究者氏名 近藤 康人
所属・役職 藤田医科大学ばんたね病院 小児科 教授
研究課題名 重症果物およびナッツ類アレルギー診断におけるGRPの有用性
研究概要 令和4年度アレルギー疾患に関する調査報告書によると、食物アレルギーがある児童生徒数が増加しており、その中でも原因食品として果物類とナッツ類が際立っていた。この背景には花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)の影響も示唆されているが、明らかにされていない。そこで我々は、これら食品の増加の背景を探るために、全国から収集する患者血清を用いて、両者の共通抗原解析と交差抗原性について明らかにしていきたい。
代表研究者氏名 佐藤 陽
所属・役職 宮城学院女子大学 生活科学部 食品栄養学科 教授
研究課題名 食物アレルギーの治療におけるD-アミノ酸含有ビオチニル化ペプチドの有用性の検証
研究概要 私達が創出したD-アミノ酸含有ビオチニル化ペプチドは、生体内安定性に優れており、食物アレルギー反応の惹起・増強に関与する血小板活性化因子やヒスタミンの活性を阻害し、アナフィラキシーの症状を改善する。最近、このペプチドはアレルギー反応の主役であるマスト細胞の脱顆粒を阻害することが解ってきた。本研究では、食物アレルギー治療におけるペプチドのさらなる有用性を細胞や動物を用いて検証する。
代表研究者氏名 田中 俊一
所属・役職 京都府立大学 生命理工情報学部 准教授
研究課題名 小麦アレルギー予防経口酵素剤の高効能化を実現する、第二世代グルテン分解酵素の創生
研究概要 小麦は5大食物アレルゲンの一つに数えられ、その原因物質であるグルテンは小麦アレルギーをはじめ、グルテン不耐症やセリアック病といった疾患を引き起こします。本研究提案では、実際の食事に対しても高効率でグルテンを分解(不活化)できる第二世代グルテン分解酵素を創出すること、そして、小麦アレルギーの発症を防ぐ経口酵素剤としての実用を通して国民の安全、安心に大きく寄与することを目指します。
代表研究者氏名 早坂 晴子
所属・役職 近畿大学 理工学部 准教授
研究課題名 ポリフェノール代謝物による樹状細胞遊走調節を介した食物アレルギーの制御
研究概要 食事性フラボノイドは腸管細胞内で抱合代謝を受けた後、血液循環系のみならず、リンパ系から腸間膜リンパ節へと輸送される。一方、樹状細胞も、小腸粘膜固有層で抗原を捕食したのち、ケモカインとその受容体シグナル依存的にリンパ管経由で腸間膜リンパ節に移動する。本研究課題では、フラボノイド代謝物がリンパ管内で樹状細胞に作用し、腸間膜リンパ節への移動を調節することで、食物アレルギー調節に関与する可能性を検討する。
代表研究者氏名 山本 貴和子
所属・役職 国立成育医療研究センター アレルギーセンター 室長
研究課題名 食物蛋白誘発胃腸症(FPIES)患者の尿中脂質バイオマーカーの探索
研究概要 食物蛋白誘発胃腸症(FPIES)は反復する消化器症状を呈する非 IgE 依存性食物アレルギーであり、近年その患者数が急増している。肥満細胞の活性化がFPIESの症状発症に関与する可能性が示唆されているが、FPIESの発症機構は明らかになっていない。本研究では、FPIES患者の尿中脂質代謝物を網羅的に解析することで、肥満細胞を含む免疫細胞の症状発症への関与を明らかにする。

●個人研究助成(16件)敬称略・五十音順

氏名 赤川 翔平
所属・役職 関西医科大学 医学部 小児科学講座 講師
研究課題名 水溶性食物繊維(イヌリン)を用いた重症心身障がい児の腸内細菌叢改善によるアレルギー予防戦略の開発
研究概要 「水様性食物繊維であるイヌリンの継続的な摂取が、重症心身障がい児の酪酸産生菌減少に特徴づけられるdysbiosis改善し、アレルギー疾患予防戦略になり得る」という仮説を検証することを目的とする。対象は経腸栄養剤を日常的に使用している15歳未満の重症心身障がい児25名ととし、イヌリンまたはマルトースを用いたプラセボ対照二重盲検クロスオーバー試験を実施する。主要評価項目は腸内細菌叢に占める酪酸産生菌割合とする。
氏名 貝谷 綾子
所属・役職 順天堂大学大学院 医学研究科 アトピー疾患研究センター 特任助教
研究課題名 IgE交差抗原による食物アレルギーの病態解明と予防法開発
研究概要 近年、花粉-食物アレルギー症候群(pollen-food allergy syndrome: PFAS)に代表される、IgE交差抗原による食物アレルギーが増加している。本研究では、マウスモデルを活用し、「食用の動植物とそれ以外の環境物質」あるいは「食用の動植物間」に存在する未知のIgE交差抗原を同定すし、IgE交差抗原による食物アレルギーの予防法を見出すことである。
氏名 佐藤 拓弥
所属・役職 高知大学大学院 総合人間自然科学研究科(博士課程) 医学専攻 医療学コース 臨床腫瘍学(臨床腫瘍専門医) 大学院生
研究課題名 獣肉アレルギーとセツキシマブ過敏症の関連性に関する前向きな検討及びセツキシマブ過敏症のスクリーニング法の考案
研究概要 獣肉アレルギーとセツキシマブ過敏症には、地域性や危険因子が共通している可能性が示唆されているが、最適なスクリーニング法について明らかになっていない。本研究では、セツキシマブ投与を受ける担癌患者群に対し、問診項目及び実臨床で実施可能な特異的lgE検査項目を前向きに検討し、最適なスクリーニング法を考案する。また、獣肉アレルギーとセツキシマブ過敏症の関連性を検討し、発症率や重症化の相関性を明らかにする。
氏名 高瀬 貴文
所属・役職 国立病院機構三重病院 小児科 / アレルギー科 医師
研究課題名 ペクチンアレルギーにおけるカシューナッツアレルギーとの関連の解明と診断方法の開発
研究概要 ペクチンは食品添加物として用いられ、近年カシューナッツとペクチンの交差感作の報告が散見されるが、すべてのカシューナッツアレルギー児にペクチンアレルギーは合併せず、検査方法なども確立されておらず、未診断のままとなることがある。カシューナッツを含む木の実類アレルギーが増加傾向にあり、ペクチンアレルギーが増加する可能性がある。 本研究ではペクチンアレルギーの実態解明とともに診断・管理方法の確立を目指す。
氏名 武村 直紀
所属・役職 大阪大学大学院 薬学研究科 准教授
研究課題名 上皮細胞傷害性を示すナノ粒子が皮膚感作と食物アレルギーに及ぼす影響の解析と予防対策の創出
研究概要 皮膚は異物の侵入を阻む上皮バリアを備えている。しかし、その機能が環境要因等により破綻すると、体内に侵入した異物に対して免疫応答が起き、アレルギーに陥ると考えられている。生活環境が目まぐるしく変化する現代において、アレルギー発症の潜在的脅威となる環境要因の特定と解析は必須の課題である。本研究では、細胞傷害性を示す特定のナノ粒子が皮膚傷害を通じて食物アレルギーを誘発するかの評価と、対策の創出を試みる。
氏名 谷田 寿志
所属・役職 名古屋市立大学医学部附属 東部医療センター 助教
研究課題名 胃食道逆流を背景とした牛乳アレルギーモデルマウスの感作初期の自然免疫の解明
研究概要 乳児期の食物アレルギーは、初めての経口摂取で発症することも少なくなく、経皮あるいは経気道などの感作経路について解析が行われている。我々は、牛乳成分を含む胃食道逆流が、気道の自然免疫細胞の活性化を介して感作を促進すると仮説を立て、これまでの実験でマウスモデルを確立し、シングルセルRNAseqで肺胞マクロファージ、TLR4の関与を明らかにした。今年度は、これらの情報を元にして蛋白レベルでの機能解析を進める。
氏名 田村 誠朗
所属・役職 兵庫医科大学 医学部 糖尿病内分泌・免疫内科 助教
研究課題名 アニサキスアレルギー患者のアニサキスアレルギーコンポーネントと病態の解析
研究概要 アニサキスアレルギーの症状は軽度のアレルギーから重度まで様々である。現在、アニサキスアレルギーのアレルゲンコンポーネントは計16種類が同定されているが、アレルゲンコンポーネントと臨床像については依然不明な点が多い。そこで本研究では、アニサキスアレルギー患者の臨床的特徴とアニサキスアレルゲンコンポーネントの関連性について解析を行う。その結果、コンポーネント別の対策が解明できる可能性があると考える。
氏名 内藤 宙大
所属・役職 名古屋学芸大学 助手
研究課題名 状態の異なる鶏卵アレルゲンのアレルゲン性の解析
研究概要 鶏卵アレルゲンの低アレルゲン化にはアレルゲンの「変性」ではなく「溶解性」の低下(不溶化)が重要であると考えられた。本研究では、主要アレルゲンであるオボアルブミン(OVA)及びオボムコイド(OVM)に着目して、それぞれ未変性、変性、凝集(不溶化)した状態のものを製作し、免疫学的アッセイやアレルギーモデルマウスを使用した動物実験によりそのアレルゲン性や消化動態・吸収性を解析する。
氏名 長田 夕佳
所属・役職 金沢大学 医薬保健研究域 薬学系 助教
研究課題名 アレルゲン性を基盤としたlgE受容体の脱感作メカニズムの解明と食物アレルギー治療への応用
研究概要 アレルゲン特異的免疫療法(脱感作療法)は、アレルギー疾患の根治的治療であるが、安全性と有効性に課題を残している。本研究は、マスト細胞in vitro脱感作システムより、IgE受容体の脱感作メカニズムを解明する。特に、アレルゲンの物理化学特性(アレルゲン性)に着目し、アレルゲン性のバリエーションを明らかにするとともに、IgE受容体クラスター形成を指標とした安全・有効な脱感作療法のための分子基盤の解明を目指す。
氏名 西澤 早紀子
所属・役職 愛知淑徳大学 食健康科学部 食創造科学科 准教授
研究課題名 食物アレルギーによる骨減少と多価不飽和脂肪酸による制御
研究概要 国内外のアレルギー疾患患者は増加しているが、アレルギー疾患により反復し遷延する炎症が全身に与える影響については未だによくわかっていない。また、若年層の疲労性骨折の増加や、加齢に伴う骨粗鬆症による骨折は大きな社会課題と認識されているが、解決の途上にある。本研究では、マウスアレルギーモデルを用いて、アレルギー疾患が骨減少へ与える影響と、より影響を受けやすい骨の特徴を組織細胞生物学的に明らかにする。
氏名 福冨 友馬
所属・役職 独立行政法人国立病院機構相模原病院 臨床研究センター 臨床研究推進部長
研究課題名 成人に持ち越した小児発症食物アレルギー患者の社会的自立度に関する実態調査:Webを介したpopulation-based study
研究概要 小児慢性疾患の「移行期」においては、医療支援のみならず、経済的・社会的自立支援を同時に行うことの重要性が指摘されている。しかし、小児発症の食物アレルギーが、成人期における自立の遅れにどの程度寄与しているかに関しては明らかではない。本研究では、 Web上の大規模リサーチモニター集団を対象にした質問票調査により、成人期に持ち越した小児発症食物アレルギー患者における社会的自立度の実態を明らかにする。
氏名 藤岡 数記
所属・役職 京都府立医科大学大学院 医学研究科 免疫内科学 病院助教
研究課題名 種々の環境物質への対策を通じた経皮感作食物アレルギー予防の可能性
研究概要 食物アレルギーの経皮感作に表皮バリア機能の破綻は深い関連を有する。ゆえにアトピー性皮膚炎等の皮膚疾患は重要な寄与因子となるが、皮膚疾患がなくとも食物アレルギーを発症する例は稀ではない。この機序として後天的・環境的な要因により表皮が影響を受けている可能性が考えられる。本研究では黄砂等の環境物質が表皮に付着することで炎症を惹起し、経皮感作による食物アレルギー発症を助長している可能性について検証する。
氏名 三苫 修也
所属・役職 宮崎大学 医学部 医学科 感染症学講座 免疫学分野 助教
研究課題名 食物アレルギーに対する舌下免疫療法の予防効果と作用機序の解明
研究概要 舌下免疫療法は、スギ花粉症とダニアレルギー性鼻炎に対して、近年、保険適用された減感作療法であり、これらアレルギー疾患の皮下免疫療法と比較したより安全性の高い根治的治療法としての可能性が注目されている。本研究では、食物アレルギーに対する安全性の高い根治的予防法の開発を目的として、舌下免疫療法の食物アレルゲン誘発性消化管炎症及びアナフィラキシーに対する予防効果とその機序を解明する。
氏名 山下 恒聖
所属・役職 昭和大学 医学部 小児科学講座 助教
研究課題名 超重症牛乳アレルギー患者に対する極微量牛乳経口負荷試験が耐性誘導に与える有効性を検証する前向き観察研究
研究概要 食物アレルギーの管理は、必要最小限の除去が基本である。日本では、3段階食物経口負荷試験での管理が提唱されているが、我々の研究でより少ない量を導入し、4段階で管理することで早期に摂取を再開でき、牛乳アレルギー患者を減らせることを示した。しかし、この管理でも牛乳を摂取できない患者がいる。そのような超重症牛乳アレルギー患者を対象に、さらに少ない量を導入することで、耐性誘導の道筋をつけられるかを検証する。
氏名 山本 健
所属・役職 千葉大学医学部附属病院 小児科 助教
研究課題名 小児牛乳アレルギー患者における重症化メカニズム解明とビタミンD併用による新規経口免疫療法の開発
研究概要 2023年に引き続き、小児の重症牛乳アレルギー(CMA)診断のためのバイオマーカー開発と重症CMAの新規治療法開発を目的とした研究を行う。CMA患者の重症化に関与する細胞群やタンパク質の特徴を新たな手法を用いて明らかにする。さらに、CMA患者において積極的なビタミンD摂取を併用した牛乳少量摂取を導入する事で、早期の耐性獲得が可能であるか否かを検証するために、介入研究を行う。
氏名 横大路 智治
所属・役職 広島大学大学院 医系科学研究科(薬) 准教授
研究課題名 低アレルゲン化食用1BS-18小麦系統を利用した安全性の高い小麦アレルギーの減感作療法の開発
研究概要 先行研究にて、ω5-グリアジン欠失食用1BS-18小麦系統が小麦アレルギーの発症予防や治療に応用できる可能性を見出した。本研究では、食用1BS-18小麦系統を用いた安全で効果的な根治療法の開発を目的に、ω5-グリアジンに対する減感作の誘導を動物モデルで検証する。また、ヒトにおける食用1BS-18小麦系統の低アレルゲン性をアレルギー症状惹起能を有する血清中ω5-グリアジンを検出する方法で検証する。

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