訪問レポート2024年
【救援活動支援助成】
令和6年 能登半島地震
訪問日:2024年8月16日(金)
場所:石川県穴水町、能登町、珠洲市、輪島市(奥能登地域)
2024年1月1日に「能登半島地震」が発災した。当財団は1月17日に「災害時等における救援活動支援助成」を新設し、本助成を通して支援活動を実施している。今回、本助成先の一つである「認定NPO法人アレルギー支援ネットワーク」による支援活動に同行する形で、理事長、副理事長、専務理事が現地入りした。大規模災害において、アレルギー疾患がある方は困難な状況に直面する可能性がある。災害対策として、当財団でなすべきことを検討するため、また、新設した「救援活動支援助成」の意義を確認することを主目的とした。
~まるおかクリニックを訪問~
発災直後から、奥能登地域で献身的な支援活動を行っている「まるおかクリニック(石川県穴水町)」を訪問し、以下を行った。
- 丸岡達也院長から被害状況および支援状況のレクチャー受講と情報交換
- アレルギー外来受診者と保護者へのヒアリング※
- ※アレルギー支援ネットワークのPAE薬剤師とPAE管理栄養士によるヒアリングに同席
- ※PAE:(一社)日本小児臨床アレルギー学会認定小児アレルギーエデュケーター(一般社団法人日本小児臨床アレルギー学会 / m3.com学会研究会)

まるおかクリニックの待合室にて
同クリニックは月2回、アレルギー外来を行っている。担当医として約50km離れた石川県羽咋市から中村利美先生(アレルギー専門医、とどろき医院)を招き、奥能登地域にアレルギーの標準治療を届ける実質的な拠点となっている。同クリニックは発災から間もないうちに、クリニックの予約システム(メール)を使って患者さんに有益な情報(相談窓口、支援物資情報等)を配信し、「食物アレルギー対応食品」の配布拠点にもなっていた。この予約システム(メール)を用いた支援情報の配信は災害時において極めて有効な方法と考えられた。
助成先のアレルギー支援ネットワークは発災直後から、奥能登地域の食物アレルギー患者さんのためのニーズ調査を行い、同クリニックが標準治療および支援活動拠点となっている実態を把握し、支援物資(食物アレルギー対応食品)を届ける活動を行うこととした。アレルギー支援ネットワークによるこの度の訪問はその効果を確認すること、および更なるニーズを調べることが主目的であった。
外来受診者へのヒアリングに同席させていただいて、当財団として特に解決したいと感じたことは、個々の備蓄(自助)が十分ではなかったこと、再開後の給食で不自由があったこと、どこにどれだけ支援が必要な人がいるかわからなかったこと、患者さんが声をあげにくい状況があったことである。
当財団としては、これらへの対策として、自助の重要性を伝える啓発機会の増加、行政へ事例をお伝えすることを行っていきたい。食物アレルギーの社会啓発も当然継続していく。光明として「声を上げたら周囲から協力を得られた」という事例も確認できたので、成功事例として広報し「当たり前のこと」となるようにしていきたい。

同クリニックのアレルギー外来受診者とその保護者の皆様は「自信と安心感に満ち溢れている」ように感じた。そう感じた理由は、自分達は日ごろから正しい医療を受け、アレルギーに関する正しい知識をもっている、だから環境変化にも対処できるという自負が垣間見えたからである。災害への一番の備えは日ごろから適切な医療を受け、正しい知識を持つことであると実感した。 併せて、丸岡院長、中村先生、医院スタッフ、支援団体の皆様からの“心と物資(情報含む)”の両面からの温かいサポートが患者さん達を包んでいるように思った。
~今後の事業活動に向けて~
- 災害対策に関して、今後、当財団でなすべきこととしては、やはり、「食物アレルギーの啓発」と「医療の均てん化」への貢献であると感じた。成功事例も確認できたので、啓発活動時に積極的に発信し、継続的な行動、つまり「当たり前のこと」となるようにしたい。これまで当財団としては「医療の均てん化」に向けた直接的な活動は行っていない。今後、事業活動に取り入れていきたい。
- 2024年1月に新設した「救援活動支援助成」の意義は極めて大きく継続の必要性を確認した。
~2024年度に当財団が関係した災害支援活動の報告、講演活動~
「災害時等における救援活動支援助成」の活動報告書
主催セミナー
共催セミナー
- 坪山 (笠岡) 宜代 食物アレルギーの視点からみた大規模災害への備えと対応~栄養と医学の立場から~ 災害時の食と栄養、第71回日本栄養改善学会学術総会、2024.9.7
- 緒方美佳 食物アレルギーの視点からみた大規模災害への備えと対応~栄養と医学の立場から~ 災害時のアレルギー患者支援、第71回日本栄養改善学会学術総会、2024.9.7
- 小林茂俊 災害における食物アレルギー患者の対応と備え -能登半島地震での経験を踏まえて- 、第25回食物アレルギー研究会、2025.2.9
助成先による学会発表
- 仲 佳代、青野珠可、中西里映子、伊藤浩明 能登半島地震後の給食における食物アレルギー患者への支援活動から見えたもの、第40回 日本小児臨床アレルギー学会学術大会、2024.7.14
- 青野珠可、仲 佳代、中西里映子、 鹿嶌英子、伊藤浩明 能登半島地震後の給食における食物アレルギー患者への支援活動から見えたものⅡ、第61回 日本小児アレルギー学会学術大会、2024.11.2
研修会
- 令和6年度石川県アレルギー疾患患者等支援担当者研修会 ~食物アレルギーの最新知識と緊急時対応~(主 催 :石川県 協力機関:NPO法人アレルギーを考える母の会、日本財団、当財団)、講師 今井孝成(昭和大学医学部小児科学講座教授)、2024.11.22
- 令和6年度母子保健コーディネーター等研修会~乳幼児期の保健指導~(主 催 :石川県 協力機関:NPO法人アレルギーを考える母の会、日本財団、当財団)、講師 古川真弓(さいわいこどもクリニック)、2024.11.22
~その他(被災状況)~
この度の訪問に際し、七尾市→穴水町→能登町→珠洲市→輪島市→金沢市と約265kmを自動車で走行してみて、道路が被害を受けることによって、支援活動や復興を難しくしている状況を思い知った。関係者の大変な努力で主要道路は通行できるようになっている。地震で生じた道路のつなぎ目(道路-橋、道路-道路)の段差は懸命な作業で修復されているが、段差を完全になくすことは難しいほどズレている箇所もある。段差により法定速度まで速度を出すことが難しい箇所もあった。特に視界の悪い夜間の通行は注意が必要な状況であった。

ひび割れ、陥没した道路(輪島市)

道路のつなぎ目(例.道路-橋)見られる段差、すき間