実践事例2023年
【取材報告】食物アレルギー対応給食実践保育園のご紹介

取材日:
2023年7月11日(火)
場 所:
社会福祉法人 あかね福祉会
幼保連携型 認定こども園 ふたば保育園

7月11日、千葉県緑区の保育園で食物アレルギー対応給食を提供されている「ふたば保育園」の篠原郁子園長に食物アレルギー対応給食の現場についてお話を伺ってきました。

ふたば保育園とニッポンハム食の未来財団

食物アレルギー対応食を通した新たな出会いでした。
当財団主催の「第8回食物アレルギー対応食 料理コンテスト」を知った篠原園長が「業務としての新しいレシピ創作に加えて社会貢献の一環としてチャレンジしてみましょう」と職員さんに提案されたそうです。

そこから4名の職員さんがコンテストに参加され、業務後や休日を利用してレシピ開発に専念し、見事、審査委員特別賞2作品・入賞1作品を選出されるという素晴らしい功績を残されています。
第8回食物アレルギー対応食 料理コンテスト 結果発表


篠原園長のお話

保育園の現状について

ふたば保育園では普段から「食育」に力を入れた保育を展開し、自分たちで育てた野菜を収穫したり、手作りみそや漬物を口にするなど食事とのかかわりを大切にした生活を送っています。

園児たちの中には食物アレルギー持ちの子やエピペンを預かっている子がいる為、誰が何を食べられないかを職員全体でしっかりと管理・把握しています。

常に子どもたちの命を最優先に考えた緊張感の絶えない仕事ですが、食物アレルギー対応給食の提供により園児や保護者、職員が安心して過ごせるようになったと感じています。

食物アレルギー対応食のスタート

食物アレルギー対応食への取り組みは2016年度から3品目(鶏卵・乳・小麦)除去、2018年度から7品目除去を行なっております。現在はくるみを加えた特定原材料8品目を使用していない献立を提供しています

苦労した点

「味」はもちろん、「見た目」が子どもたちに受け入れてもらえるかどうかという点でしょうか。子どもは素直で、どんなに小さな子でも見た目がおいしそうでないと食べてくれません。試行錯誤する大人たちのことなど気にもせず、正直な感想はすぐに行動に現れます。

子どもたちの好みの味・食感・見た目のバランスを構築する事にはずいぶん苦労しました。

また、不足する栄養面をどのように補うか、食物アレルギーを持たない子にとっては不足しがちな栄養素はどう充足させるのか等、メニューの開発には悪戦苦闘しました。

取り組みの成果

素材の味を大切にし、旬のものを食べている子どもたちは「だし」の味の違いが分かります。「今日はいつもと味が違うね」という言葉も飛び出すくらい幼児期の味覚形成に大きく寄与できていると考えています。

また、食物アレルギーに対する職員のプレッシャーが格段に減りました。食物アレルギー対応給食のおかげで、微量でも反応してしまう子どもへの細やかな対応や、取り違えがなくなることで職員自身の負担が減り、精神的なゆとりにもつながったと考えています。

今後の課題

幸い現時点で大豆アレルギーの園児はいませんが、今後入園してくるお子さんが大豆アレルギーをお持ちの場合は献立の再考が必要になってくることが大きな課題と考えています。

園長からのメッセージ

あまり関連性がないと考える方もおられるかと思いますが、「食事」というのは子どもたちの自己肯定感を高める重要な要素の一つです。

食物アレルギーの有無に関係なく、みんなと同じものを同じ時間に同じ部屋で食べられる環境が当たり前であってほしいですし、その環境を作りだせるのも我々次第なのです。

食物アレルギー対応給食の提供は決して難しいものではありません。この取り組みは子どもたちの心の成育と命を守ることに直結し、職員の負担も事故のリスクも減るのでもっと多くの園で実践しいていただきたいと考えています。

財団職員も当日の給食をいただきました

料理4品
<給食メニュー>
  • ごはん(発芽玄米など)
  • 味噌汁(具:豆腐・わかめ・油揚げ・玉ねぎ・えのき・大根の葉・手作りみそ)
  • じゃこサラダ
  • 鶏肉のママレード焼き
  • 手作りの梅干し・お漬物
  • 農園で取れたトマト
  • スイカ・パイナップル
感じた事
  • 素材の味を生かした優しい味なのに物足りなさを感じない味付けでした。
  • 1品に対しての使用している具が豊富でとても満足感があります。
  • 同園で収穫された季節の野菜や手作りのお漬物も含まれ大変贅沢な給食でした。
  • 除去食というとどうしてもネガティブなイメージが先行してしまいがちですが、それらを払拭して「みんなで同じ給食を食べられる喜び」を一番に考えた取り組みが素晴らしいです。ぜひ他の保育園でも実践してほしい取り組みです。

【篠原園長のコメント】

〜子どもと保育者の「幸せ」を大切に〜

全てのクラスが複数担任制になっていますので、子どもたちの食事マナーや食事の様子を観察する職員を配置することができます。
クラス担任は順番に食事をゆっくりいただく事で健康面を重視し、ストレスからの解放やリフレッシュにつながると考えています。おやつは少量ですが担任も一緒にいただいています。子どもたちの食べているおやつの確認にもなっています。

当財団は、食物アレルギーを取り巻く食環境の向上や食物アレルギーの方のQOL向上を目指す啓発活動に注力しております。

今回お話を伺った「ふたば保育園」の取り組みをより多くの方に知っていただき、食物アレルギー対応食の普及に貢献できればと考えております。

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